月経困難症 ・PMS―「病気ではない」と思い込ませないために
月経困難症は「病気ではない」と思い込まれやすく、医療に結び付けることが遅れるケースがあります。教員や養護教諭が正しく理解することが大切です。加えて、月経前に心身の不調が現れる「PMS(月経前症候群)」についても、近年の理解が進んでおり、適切な支援が求められます。
月経困難症とは?
月経困難症とは月経に伴って生じる下腹部痛や腰痛、吐き気、頭痛、倦怠感などの症状が強く、日常生活に支障をきたす状態をいいます。
2つの分類
・機能性月経困難症:子宮や卵巣に明らかな病気がないのに強い痛みを感じる(思春期に多い)。プロスタグランジン(子宮平滑筋の収縮作用)の分泌過多が原因と言われている。年齢、妊娠出産とともに、軽快することが多い。
・器質性月経困難症:子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患が原因で起こる。初潮から数年たった頃に発症しやすい。
主な症状
・月経前から月経中にかけての強い腹痛や腰痛
・頭痛、吐き気、食欲不振
・イライラ、不安感、集中困難
・日常生活や学習活動への支障(早退、欠席、保健室利用の増加)
治療と対応
・軽症の場合:生活習慣の見直し、セルフケア(温罨法(おんあんぽう)、運動、休息など)
市販の鎮痛薬を使用することもありますが、乱用を防ぐためにも医療機関の相談を勧めます。
・中等度以上や器質性が疑われる場合:婦人科受診を勧める
PMS(月経前症候群)とは?
PMSとは、月経の3~10日前から始まり、月経が始まると軽快する身体的・精神的な不調を指します。思春期の女子生徒にもみられることがあり、学校生活に大きな影響を及ぼすこともあります。
主な症状
-
【精神的症状】イライラ、不安、気分の落ち込み、涙もろさ、集中困難
-
【身体的症状】乳房の張り、腹部膨満感、頭痛、むくみ、眠気
症状や程度は人によって異なり、周囲の理解が得られにくいこともストレスの一因となります。
学校における支援のポイント
保健指導目標
・月経に伴う身体や心の変化に気づき、自分に合ったセルフケアや生活調整ができるようになる。
保健指導の方針
・月経や月経困難症に関する正しい知識を伝えるとともに、症状に気づき適切な対処ができる力を育てる。
・記録の活用を通じて、自身の体調の変化に自覚的になり、必要に応じて医療機関へ相談する行動につなげられるよう支援する。
まとめ
月経困難症は多くの生徒が経験しうるものですが、症状や受け止め方は個人差が大きく、本人の声を丁寧に聞くことが求められます。「我慢するもの」と誤解されやすい月経の悩みに対して、正しい知識と支援の姿勢を持つことが大切です。
参考文献
日本学校保健会(2021)『教職員のための子供の健康相談及び保健指導の手引(令和3年度改訂)』